HERPのSaaSレベニュープロセスを大公開。これまでの失敗と今後のビジネスの展開
HERP Hireは、HR TechのB2B SaaSプロダクトとして2019年3月に公式リリースし、2021年10月時点で900社を超えるユーザーに利用されています。
現在は20名弱のビジネスサイドのメンバーで活動していますが、2年前の公式リリース直後は3名のみ。しかしその最初期から、下記のようなデータドリブンのプロセス改善に投資し、COVID-19下での採用市場縮小などの危機も乗り越えてまいりました。
みなさまの業務改善に繋がるヒントを持ち帰っていただくことを目的に、この2年間の道のりを赤裸々にお話しするオンラインイベントを開催させていただきました。本記事はその内容をまとめたイベントレポートとなりますので、ぜひご覧ください。
登壇者プロフィール
ミッションは「採用を変え、日本を強く。」
徳永:本日司会を務めます取締役COOの徳永です。
本日のゴールは、HERPのレベニュープロセスの理解を通じて、業務改善に繋がるヒントを持ち帰っていただくことです。我々がどういったプロセスで日々やってきているかを赤裸々にお話しできたらと思っています。よろしくお願いいたします。
まずは前提となる我々HERPについて、最近社内外に公開したCulture Deckを元に紹介いたします。
HERPは「採用を変え、日本を強く。」をミッションとして掲げているHRTechのBtoB SaaSです。プロダクトビジョンは「オープンな採用を支え、事業成長を加速させる」としていて、デジタル人材を採用する企業様向けに、候補者とのコミュニケーション基盤となるプロダクトを提供しています。
採用市場はここ数年売り手市場化が加速していて、企業が選ぶ側ではなく選ばれる側になってきました。これまではいかに候補者の見極めを効率的にやるかということが論点でしたが、いかに候補者の方に能動的なアプローチができるかが重要になってきています。我々はそれを支えるためのプロダクトを提供していきたいと考えており、採用管理ツールのHERP Hireと候補者接点を担うHERP Nurtureを提供しています。この他にも、今後複数のプロダクトを立ち上げていく予定です。
HERP Hireは採用においてのSalesforceのようなイメージです。候補者に出会って応募が発生してから、内定・入社までを管理するツールです。HERP Nurtureは候補者応募前の段階からを管理するタレントプール管理ツールです。現状有償で提供しているのはHERP Hireのみです。
どちらも採用管理ツールとしては後発のプロダクトのため、顧客に提供できる体験価値を伸ばしていきながら、どう競争力を磨くのかが大事なフェーズとなっています。
運用のポイントは、あくまでボトルネックの把握のためにレベニュープロセスを使うこと
冨田:ではさっそく、HERPのレベニュープロセスの現状をお話しします。
まずは商材としての特徴ですが、メイン顧客はIT系人材を採用している応募規模300件/月以下の企業です。シリーズAからマザーズ上場前くらいの企業をイメージしていただければと思います。
平均単価は7-8万円で、受注までのリードタイムは20日前後とやや短めです。販路は直販のみとなっています。
レベニューモデルの全体像は、下図のようになっています。それぞれの人数規模としては、マーケティングチーム3名、インサイドセールス2名、フィールドセールス5名、カスタマーサクセス6名。開発が18名となっています。(※2021年10月時点)
全体のKGIは、新規CMRR(Committed Monthly Recurring Revenue)純増金額です。それを、パイプ数・新規受注金額・ネットリテンション金額と分解し、それをさらに各KPIに落としています。
運用のポイントをあえてひとつだけ上げさせていただくと、The Model型のレベニュープロセスの一番の利点はボトルネックの把握が容易になることです。
私はよくパン工場に例えて考えています。パンの出荷量を最大化する時に、小麦が足りない中で発酵速度を上げても出荷量は増えないですよね。同じように、インサイドセールスがKPIを圧倒的に達成していたとしても、その後工程のフィールドセールスが受注出来ていなかったら意味がなくなってしまいます。
各プロセスにおいてKPIを高く達成することを目指したくなってしまいますが、あくまでボトルネックの把握が最優先です。ここについてはこれまで我々も何度か失敗してきたので、改めてお伝えできたらと思っています。
なお、ボトルネックを把握して解消するという業務改善でも数字は伸びていきますが、我々はモデル自体の改善がうまれるように、あえてちょっと背伸びした数字目標を四半期ごとに設定しています。
この先は、各ファンクションのこだわりと実例の紹介をチームごとにさせていただきます。
育成リードマトリクスでマーケティング投資の正のサイクルを回す
河野:マーケティングチームのこだわりは、再現性のあるマーケティングの仕組みをつくることです。取り組みはいくつかありますが、育成リードマトリクスによるリードマネジメントについて今日はお話しします。
我々の商品は採用管理ツールなので、採用ニーズがないと受注できません。なので、リードを2つの軸で分類しました。1つ目の軸はDemand、その企業がHERPを検討しているか。もう1つの軸はSupply、HERPがその企業に価値を提供できるかです。
Demandについては、問い合わせがあった・料金表をダウンロードしてくれた・ウェビナー参加時にATS検討中と回答いただいたなど、コンバージョンの種類で分類しています。
Supplyについては、SalesforceとFORCASのデータからターゲットセグメントを定義し、分類しています。
次に、2つの軸両方で優先順位が高いセグメントに各リードを引き上げていくわけですが、Demand(HERPを検討しているかどうか)軸での引き上げはリードナーチャリング、Supply(HERPがその企業に価値を提供できるか)軸での引き上げはプロダクト開発で行います。
リードナーチャリングは、各セグメントに合わせたマーケティング施策を実行し、毎月前月からリードを引き上げられたか?という振り返りを行っています。
この取り組みによって、リードからの受注率が上がるとその分1リード獲得にかけられる単価が上がり、さらにリードを増やすことができるという正のサイクルを回すことができるので、引き続きこのサイクルを回し続けていきたいと思っています。
新規受注に繋がるアポイントを。インサイドセールスの3つのこだわり
冨田:インサイドセールスのこだわりは、レベニュープロセスにおける最終ゴールの新規受注に繋がるインサイドセールスを行うことです。アポ取り部隊になってしまうとレベニュープロセス全体が痩せ細ってしまうので、そうならないようにマーケティングとフィールドセールスの調整弁を担いながら推進しています。
そのこだわりを実現するために、主に3つの取り組みを行っています。
1つ目は、KPIをアポイント数ではなくパイプ数とすることです。あくまで案件としてカウントできるものだけをKPIとしています。
2つ目は、フィールドセールスへの引き継ぎメモの改善です。温度感や事前情報を伝えて、効率的な商談ができるようにサポートしています。
3つ目は、月初・月中・月末とそれぞれでフィールドセールスへ渡すアポイント数の調整をしていることです。まず月初にどれくらいのパイプ数が必要かを算出し、月中までの短期KPIを設定します。月中はフィールドセールスの当月着地予定の案件進捗を見ながら、アポ配分を行います。月末はクロージング優先度が高いので、クロージングとアポイントの緊急度のバランスを見ながら調整を行っています。
顧客の採用成功のために。効率的でありながら、顧客ごとに寄り添った提案手法
宮田:フィールドセールスのこだわりは、顧客の採用成功を何より第一に考え、サービス価値を提案することです。
プロダクトをただ売ることは推奨されない行動です。推奨される行動は、HERPのサービス価値の総和で顧客の課題を解決することです。
ただの物売りになるなというのは他の会社でもよく言われることだと思うのですが、実際にそのためにやっていることの一部をご紹介します。
まずは、初回商談資料を顧客の課題を丁寧にヒアリングできるよう型化しています。理想の採用はどんな状態で、今現実はどのような状態なのかをヒアリングし、そのギャップを埋める方策を十分に検討できるようなフォーマットにしています。
初回商談が終わったら、個別カスタマイズした提案を行います。商談後すぐに提案に盛り込むべき要素と全体構成を確認し、その後ストーリーボードで具体的な商談資料のイメージをつくります。
また、週1回チームで集まり、成功事例や振り返りをシェアしながら、提案資料や二回目の商談を設定できてない企業の進捗を確認しています。月次で全案件の総振り返りも行っています。型はできつつあるので、いかに効率的に提案のサイクルを回せるかが次のチャレンジになります。
開発チームや顧客までも巻き込み課題を解決するカスタマーサクセス
原:カスタマーサクセスチームのこだわりの1つ目は、プロダクトの進化に伴い常にカスタマーサクセスも変化することです。
具体的には、開発チームとの協働に力を入れています。HERPでは小さくリリースして仮説検証を回すことを徹底しているので、その検証がスムーズに進むように、ニーズがありそうなお客様を選定・アポ打診して開発チームとお客様を繋ぐ役割をになっています。また、すでに本リリース済みの機能についていただいた要望は、notionにチケットを追加してプロダクトオーナーと優先度の相談を実施しています。
2つ目は、定量的な情報や事実に基づき、仕組みで解決することです。例えば、プロダクトの利用状況をredashというツールからスプレッドシートに出力する形でウォッチしていますが、過去の解約理由を元に整理している”ヤバさ指標”を下回っていないかを終始チェックすることで、解約の事前検知につながっています。
3つ目は、ユーザーとともにサービスをつくることです。ユーザーコミュニティを運営しており、お客様にコミュニティリーダー・運営メンバーを担ってもらいながら、勉強会などを実施しています。BtoB SaaSには珍しいとよく言われるのですが、お客様の熱量が高く、サービスを盛り上げてくれています。
Q&Aセッション
徳永:ここまでは、レベニュープロセスの全体像や、各プロセスのこだわりをお伝えしてきました。ここからは、事前に準備してきたテーマや、みなさまからいただいたご質問に答えるQ&Aセッションとさせていただきます。
徳永:フィールドセールスでモニタリングしている項目はありますか?とご質問いただいています。
宮田:まずは目標受注金額に対して進捗が何%なのか。残りの金額に対してヨミはどれくらいあるかを見ています。
ヨミについても、これからアポイントなのか、すでに決済待ちなのか等のフェーズごとに分類し、それぞれの案件についてネクストアクションはいつで、どういうツールを使っているのか、など細かく見に行っています。
徳永:受注までのリードタイムが短い中で試行錯誤しているnoteの記事があるので、興味ある方はぜひ読んでみていただけると嬉しいです。
徳永:次の質問です。個人のキャリアゴールと事業ミッションをどう紐づけていますか?
冨田:まずは採用の段階で、事業ミッションに共感できるかを大切にしています。弊社はミッションを実現することを一番大切なことと置いていて、そのためにこれから複数プロダクトをつくっていくフェーズなので、それを一緒に楽しめるかを採用時に見極めるという大前提があります。
チームによっては、OKRを設定しているところもありますが、全社一律でやっていることはありません。
徳永:ご質問ありがとうございました。今までを振り返っての失敗はありますか?
冨田:ひとつは採用ですね。SaaSはとにかく人が必要ですが、採用してから活躍するまでのリードタイムもあるので、先を見越して採用をしておかなければいけなかったなと思っています。
宮田:フィールドセールスの失敗は、どんなお客さんに買ってもらえるのかをきちんと分析しないままにチャネルを増やして、受注率が大きく下がったことです。今は、これを満たさないと提案しないという基準を決めてるので、そういった受注率にこだわった動きを最初からする必要があったなと思います。
冨田:量を増やす前に質を上げれないかを考えるというのは大事ですよね。理想は1人と出会ってその人に買ってもらえることだと思うので、まずは質上げるというのは忘れないようにしたいと思っています。
徳永:ありがとうございます。
次の質問は、今後3年間でビジネスチームで大事になることとは?です。
河野:今後プロダクトはどんどん増えていくので、その中でどんなレベニュープロセスが必要なのか?を常に考えて古いものを壊していける人を増やすことですかね。
原:そうですね。1年で2サービス出てるので、この先3年だと6サービス出すことになります。CSとしても打ち手がたくさんになるということなので、時にはこっちはダウンセル、こっちはアップセルというバランスも取りながら、お客さんにとっていい提案ができる状態でありたいと思っています。
徳永:最後の質問です。どんな人と働きたいですか?
冨田:PMF後のグロースは、HERPならできると思っています。一方で、PMFはまだ型化できていないと思っています。どうやったらお金を払ってもらえて、採用をよりよくできて、引いては世の中をよりよくできるのか?ということを学習していくフェーズです。今のフェーズにわくわくできる人と働けたら嬉しいなと思っています。
徳永:ありがとうございます。HERPの情報は常にnoteでも発信していたり、カジュアル面談で個別にお話もできるので、ぜひ見ていただければと思います。
ご静聴くださりありがとうございました!
次回イベントのご案内
12月22日(水)にHERPのセールスメンバーとの交流の場を企画させていただきました。オフラインで弊社五反田オフィスにて、おいしいチキンを振る舞いながらざっくばらんに日々の気付きや悩みなどを語り合える時間にしたいと思っています。もちろん参加無料です。
SaaSセールスの魅力やこれまでの取り組みなどもお話させていただき、学びも持ち帰っていただけると思いますので、SaaSやHRTechに興味のある方など、お気軽にご参加ください!