【HERP×Parame代表対談】HERP初の事業買収の舞台裏——語り合う中で見えてきた「スタートアップ×M&A」の理想形
こんにちは!HERP広報の白石です。
HERPでは、2024年7月にオンライン完結型リファレンスチェックツール『HERP Trust』の正式提供を開始しました。『HERP Trust』は、2024年3月にParame社からの事業買収を発表した『Parame Recruit』が前身となるサービスです。
今回HERPとしては初となる事業買収。各フェーズではどのような意思決定がなされ、新サービスにはどんな想いが込められているのでしょうか。
そこで今回は『Parame Recruit』を開発したParame代表の岡野亮義さんをお招きして、HERP代表の庄田と「事業譲渡の舞台裏」を語り合ってもらいました。
2人の初対面からわずか3カ月後には成立、という異例のスピードで進んだ事業譲渡の裏側を話すうちに、対談はスタートアップ業界全体の話題にまで発展して……!?
事業譲渡を決めた背景にある「to C」への想い
——まずは『Parame Recruit』のサービスについて教えてください。
岡野:『Parame Recruit』は、採⽤候補者のことをよく知る⼈物から、⾯接だけでは分からない候補者の性格やスキル⾯、実績などの情報を取得し、採⽤のミスマッチリスクを最⼩化するオンライン完結型のリファレンスチェックサービスです。
もともとParameでは創業時に「個人の信用をアップデート」をミッションに掲げ、個人の方々が自身のリファレンスデータをParameアカウントに蓄積でき、そのデータを活かして、キャリアにおける「職歴・学歴・資格に相当する個人の信用指標」を作り上げることを目標としていました。
その第一歩として選んだのが、採用担当者様向けのリファレンスチェックサービスです。企業様の採用ミスマッチ課題を解決しつつ、サービス内にリファレンスデータを蓄積していき、最終的には個人ユーザーの方々がオーナーシップを持って、自身のリファレンス管理や、キャリアアップに活かせる世界を作りたいと考えていました。
——今回HERPへの事業譲渡に至ったのはなぜでしょうか?
岡野:リファレンスチェックサービスを4年ほど運用する中で、導入企業様には安定して利用いただき、黒字化もしていましたが、より成長させるためにはもう一歩大きな打ち手が必要だと感じていました。その打ち手の1つとして検討していたのがM&Aです。
実は複数の企業様から買収のお声掛けはいただいていたのですが、その中でもHERPさんは、リファレンスチェックサービスとしての評価だけでなく、私たちが掲げるミッションやその先のサービス構想に深く共感いただけたのが、とても大きいです。
また弊社はそのタイミングで新規事業も立ち上げていたので、「HERPさんなら安心してお任せできる」とサービスを譲渡させていただき、私たちは次の新規事業へフォーカスするという決心ができました。
——HERP側はいかがですか?
庄田:実はHERPでも以前から、社内でリファレンスチェックサービスのアイデアはありつつも、マーケットが小さく新規事業としてリソースを投入するのは難しいという判断をしていたんです。
さらに昨年頃から、主力事業である『HERP Hire』をベースとした採用企業様への提供サービスの拡充を通した売上拡大を意図して、リファレンスチェックを始めとした選考プロセスにまつわる周辺事業で良いサービスがあれば、M&Aも選択肢の一つとして考えようという話が立ち上がっていました。会社として、一度M&Aの検討プロセスを経験したいとも思っていたんです。
ただ積極的に担当者を立てていたわけではなく、いろいろな情報を受動的に見ていた時に、M&Aの仲介会社からInfo宛にメールが来て。社名が伏せられた状態でサービス内容を見て「これ、もしかしてParameさんでは?」と社内で話題になり、話を聞かせてもらいました。
Parameさんのサービス自体は知っていたものの、岡野さんとお話しさせてもらうのはその時が初めてでしたね。
岡野:私もHERPさんは創業をした時から知っていましたが、お話したことはなかったので、楽しみでしたね。
ただM&Aでいうと僕も初めてで、もっと規模が大きい上場企業様などがするイメージがあったので、「庄田さんは良い人そうだけど、今回は情報交換くらいで終わるかな」と思っていたのが、最初の正直な感想でした(笑)
しかし最初のお打合せで、庄田さんのリファレンスチェックへの理解、マーケットに対する解像度が非常に高く「過去にリファレンスチェック事業を真剣に検討していたんだな」というのは、すぐに伝わりました。
庄田: HERPは「求職者体験の品質を上げる」「求職者のためにサービスを作る」というスタンスでやっているので、私も岡野さんとお話をする中で、HERPとParameさんの思想に共通するものを感じていました。
——最終的な意思決定をした理由は何でしたか?
庄田:そもそもマルチプロダクト化を進める時に、求職者体験の品質を上げるというコンセプトのもと、HERPのアセットをどう有効活用できるかという視点でプロダクトを選定していきたいという思いがあります。(求職者体験の品質向上についてはこちらの記事もご覧ください!)
HERPのアセットは大きく二つあって、一つは『HERP Hire』が約2000社の企業様に毎日のように使っていただいているシステムであること。そしてもう一つは、『HERP Hire』の中にある求職者の方々の事例や評価のデータです。
Parameさんの思想は、求職者の方々の転職活動をより良いものにするというものであり、その思想がサービスにも体現されていると感じていましたし、それを『HERP Hire』内で完結させることで、HERPの二つのアセットに効率的にレバレッジがかけられると考えました。
岡野:私たちは事業売却によって資金調達を達成するという目的もあったので、もちろん金額面もあるのですが、オファーをいただいた企業様の中でHERPさんはダントツで一番サービスを成長させてくれそうなイメージが湧きました。
また『Parame Recruit』を単なるリファレンスチェックサービスとしてではなく、その先の「個人の信用をアップデート」という私たちのミッションも汲んでいただき、その思想がHERPさんのミッションにもマッチしていたことも大きなポイントでした。
個人的な想いとしては、僕らだけだと実現できなかったレベルまでサービスを成長させていただける企業様にサービスを引き継ぎたいという想いもあったので、『HERP Hire』などのHR SaaSを僕らよりも大きい規模で運営されていて、さらに事業だけではなく思想まで理解してくださったことには、とても安心感がありました。
『HERP Trust』の登場で、硬直していたマーケットが変わる?
——実際に事業譲渡は、どのようなスケジュールで進みましたか?
庄田:岡野さんには1月に初めてお会いして、2月にはLOI(買収意向表明書)を出して、その1カ月後にはDD(デューデリジェンス)に移っていました。
岡野:今回は会社売却ではなく事業譲渡だったこともありますし、お互いスタートアップということで、スピード感はめちゃくちゃ早かったですよね。
庄田:初めての買収だったので比較対象はありませんが、このスピード感でできるものなんだと驚きました。
——3月に発表した後、7月には『HERP Trust』の正式提供を開始しています。これもかなりスピード感がありますが、どのように新しいサービスに生まれ変わったのでしょうか?
庄田:新しいサービスに刷新するという意図は元からなくて、『Parame Recuit』というサービスの良さを継承しつつ、HERPブランドへのリブランディングを進めてきました。リブランディングに加えて『HERP Hire』内でリファレンスチェックプロセス(URLの発行〜回答結果確認)を完結させることにこれまでは注力してきました。これによって、企業・求職者の体験を向上しています。実際にユーザー企業様からは、好意的な声が届いていますね。
岡野:『HERP Trust』にリブランディングしてから変わった点として、体制面も大きいと感じています。私たちが運営していた頃は、リソースの問題で導入後のサポートが充分にできていなかった課題もあったのですが、今はカスタマーサクセス体制などもしっかりしていて、導入後のクライアントの体験や価値を高めることに力を注げている印象です。
あとはLPなどでも「リファレンスチェックに関わる求職者や回答者のユーザー体験も良くする」というコンセプトメッセージを、より強く伝えてくれているので、本当に私たちがやりきれていなかったところをやってくれているなという所感があります。
庄田:岡野さんが『HERP Trust』に期待していることはありますか?
岡野:私たちの運営時からリファレンスチェックサービスとしての機能は比較的完成されていました。それは競合サービスにも言えることで、コツコツ小さな改善の積み重ねはできますが、マーケット全体で大きな打ち手が打ちにくくなっている感覚がありました。
そこにATSを運営するHERPが参入することは、マーケットにとって大きな変化になりえると思っています。他社にはなかなか真似できない『HERP Hire』と『HERP Trust』のシナジーを活かして、これからシェアを広げていただけたら本当に嬉しいですし、とても楽しみです。
庄田さんは、今後の『HERP Trust』をどうしていきたいと考えているんですか?
庄田:現在は主に企業向けのプロダクトですが、今後は求職者の方からも大きなご期待をいただけるようなビジネスにしたいと思っています。
岡野さんが仰るように、リファレンスチェックの機能面って差別化がしづらいんですよね。だからこそHERPが取り組むのは、求職者に対してのバリューをとにかく上げること。具体的には、『HERP Trust』が持つユーザーIDをうまく『HERP Hire』と統合して、仕組み化していくことを想定しています。
『Parame Recruit』が目指していた世界と遠からず、『HERP Trust』のIDを活用して、求職者がリファレンスチェックのデータを転職活動で使えるような未来を作っていきたいですね。そして『HERP Trust』だけではなく当社のその他の事業(『HERP Careers』『ジョブミル』等)との連携を強めることで、より求職者体験の品質向上を進めていきたいと思います。
(HERP Trustが目指す未来については、こちらもご覧ください!)
今回が「スタートアップの成功事例」となるように
——お互い会社として初めてのM&Aとなりましたが、振り返ってみていかがでしたか?
庄田:今回のM&Aを通じて、HERPのメンバーに「そういう選択肢もあるんだ」と示せたことは会社にとって大きかったと思いますし、本格的にマルチプロダクト化を進めるというメッセージにも繋がりました。優秀なメンバーに、今回のような事業譲受からリブランディング、そして我々なりの手法での事業拡大という挑戦の機会を作ることができたのも良かったですね。
岡野:M&A前、Parameには「新規事業への資金調達ニーズ」「複数事業へのリソース分散課題」という2つの課題がありました。今回の事業譲渡は、その2つを同時に解決できる唯一のソリューションだったのではないかと思っています。
M&Aの一連のプロセスを経験できたのも良かったです。業務引き継ぎもかなりスムーズに進んでいますよね。譲渡から半年経った今はすでにParameがほぼ介在することなく、HERPさんにオペレーションをしていただけていますから。
庄田:開発言語が他のプロダクトと異なるなど、細かな引継ぎの難しさはありましたが、譲り受けてから大きな困難はまだないので、あとは実績を作るのみです。
岡野:そうですね。M&Aって成立した時は世に知られますが、その後のことはあまり世に出ず、M&A後の統合プロセス(PMI)が上手くいかずに、効果を出せなかった事例もすごく多いと思っています。そういう面では、現時点ではとてもスムーズにいっているので、今回のM&Aが双方にとって成功事例になるといいなと思います。
庄田:あと今回は、Parameさんが事業を譲渡した後に、会社自体を清算せずにもう一つのサービスを続けていることもポイントですよね。会社の清算を目的にせずに、やりたいことがあるから事業譲渡を選ぶというのは、本来あるべき姿だと感じています。
岡野:M&A後は「珍しいケースだね」と言われますし、我々規模のスタートアップでも、M&Aという選択肢があると知れたのは発見でした。もっと多くの起業家にとっても選択肢になると良いなと思います。
庄田:創業事業を明け渡すことには心理的な負担もあるはずですが、それを正の力に変えるアクションや機会は、もっと認知されていいと思います。
岡野:M&Aってもっと大規模で大変なイメージもありますが、スタートアップ同士でこういったケースが増えれば、起業もしやすくなりますよね。スタートアップの新しい成長手段として、業界全体として事例がたくさん出てくれば、日本のエコシステム全体のプラスになるはずです。
庄田:いいお話ですね。私もそう思います。
岡野:あとは、私は0からの新規事業立ち上げには得意意識があるけれど、組織を拡大してグロースさせるタイミングで、オペレーションを作ったり、予実のKPI管理をしたりするのは苦手意識があるんです。所謂「起業」から「経営」に変わるようなタイミングで、自分よりも得意な人に任せればもっと事業を伸ばせるんだろうなとは常々思っていました。
個人的には、海外のように事業のフェーズに応じて経営者が交代するような選択肢がもっと一般的になってもいいなと思っています。
庄田:そういった目的のM&Aはもっと増えてほしいですよね。選択肢としての認知度が低いし、複数のフェーズにおける舵取りが得意な人もまだ少ないと思うので、皆でエコシステムを回していかねばならないと強く感じます。
SaaSプロダクト第二ステップとして成長を続ける
——最後に、両社の今後についても教えてください。
岡野:今回のM&Aを活かす形で新規事業に集中して、会社としてさらなる成長を目指していきたいと考えています。HERPさんへ事業譲渡後も弊社は変わらずスタートアップです。HERPさんに負けぬよう事業も進めておりますので、是非このインタビューを通じて弊社のことも知っていただけたら幸いです。
庄田:HERPは今、SaaSプロダクトとしての成長の第二ステップに来ています。SaaSにおける重要指標を追うに留まらず、どうやって売上の高さを作り、採用マッチングの総量を最大化できるか。そのために今後はリスクを取りながら進んでいきたいですし、その過程に新規事業やM&Aがあると考えています。
その第一弾が今回の取り組みで、M&Aはビジネスとしても社内に対しても良い影響があると分かったので、今後も積極的に進めていきたいですね。
HERPでは仲間を積極採用中です!
HERPはこれまで、コーポレートミッションとして掲げる「採用を変え、日本を強く。」を実現するため、採用企業向け、人材紹介会社向け、候補者向けに、それぞれ抱える課題を解決するサービスを開発・提供してきました。
今後も、社内での事業開発にとどまらず、M&Aなどの様々な成長手法を用いて、採用領域におけるサービスを拡充し、提供価値の最大化を加速していきます。
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