【イベントレポート】DNX×DCM×HERP:「採用が全て」を目の当たりにし続けたVCと日本の採用を語り尽くす
10/18(月)にオンラインイベント“「採用が全て」を目の当たりにし続けたVCと日本の採用を語り尽くす”を開催させていただきました。ゲストにはDNX Venturesの倉林陽氏、DCM Venturesの原健一郎氏をお迎えいたしました。
スタートアップを数多く支援してきたベンチャーキャピタリストとして、優秀な人材を採用できるかがいかにその成功を左右するか、を目の当たりにし続けてきた両氏と、日本企業の採用活動・それを支える採用マーケットが抱える課題や、HERPを始めとしたHRスタートアップに期待される役割・変化について議論させていただく場となりました。
本日はそのイベントレポートをお届けします。
登壇者プロフィール
自己紹介
庄田:HRtechのSaaSサービスを提供している、HERPの庄田と申します。ミッションには「採用を変え、日本を強く。」を掲げています。
世界的に影響力のある会社を増やすことを心から実現したいと思っていて、成長の一番の源である人・採用を支援したいと考えています。
今の日本には、高度経済成長期につくられた採用・雇用がまだまだ根付いますが、現在のあるべき姿にしていきたいと考えていて、それを実現するためのサービスをたくさんつくっていこうとしています。特に今の採用だと難しい職種、例えばデジタル人材の採用をいかに変えていくかに現在はフォーカスしています。
倉林:DNX Venturesの倉林です。新卒から25年ほどずっとIT業界にいます。25歳の頃にたまたまアメリカのVCに出向した時に、直感とロジックの両方が必要であり、日本がアメリカに比べて遅れてる分野だったVCの仕事に面白さを感じ、今までVCの仕事をしてきました。
DNXは日本でSaaSベンチャーへの投資が圧倒的に多いので、HERPもSaaS企業としてどうかという観点で見ていますが、自分個人としても過去に感じたことのある、日本の採用システムの課題を解決しようとしている点ですごく応援しています。
原:DCMベンチャーズの原です。マッキンゼーに新卒で入社した後、中国でスタートアップを経験しました。そこでスタートアップの面白さに気づき、アメリカへ留学した後いろんなトライをして、今に至ります。
HERPは2年前から投資をしていますが、そのさらに2年前にこちらから連絡したのが始まりです。誰に聞いても1番困っていることは採用と言われる中で、プロダクトにも詳しく、ユーザーペインの理解も深く、仮説も鋭かったので注目していました。
投資先の採用でうまくいっているなあと感じる事例を一つ教えてください
庄田:ありがとうございます。さっそくディスカッションテーマに移っていけたらと思います。まず一つ目のテーマは、投資先の採用で、うまくいっている会社さんの事例についてです。
原:2社思い浮かんでいるのですが、両方に共通しているのは経営陣がかなりの時間コミットしているということです。経営陣が候補者に直接会って思いを伝えるのは、スタートアップにとってすごく大事だと思います。
また、どちらもタレントプールを社員総出でつくっていますね。とにかく社内のことをオープンに分かりやすくして、どれだけ発信するのというくらい社員全員で発信して、たくさんの人に会う。全員でリファラル採用を頑張っているのがひとつのポイントかなと思います。
庄田:経営陣が採用にコミットするというのは多くの会社が取り入れるようになってきている気がしますが、現場のコミットをそこまで引き出せるのはすごいですよね。それが仕組み化できるなら、ビジネスチャンスでもあるかもしれない。メンバーはなぜそこまで全力で取り組めるんでしょうか。
原:会社が採用が一番今優先して取り組むべきことであると決めていて、更にそれが社内でコンセンサスが取れているからだと思います。
また、実際に多くの社員がリファラルで入社しているんですよね。自分がリファラルで入社していると、候補者の方の不安にも実感を持って共感できるので、安心して選考を受けてもらうことができる。そんな環境を作るのはすごく時間がかかることですが、好循環ですよね。
庄田:社員みんなが自社で働くことに前向きであることが大事ということですね。仕組みだけでコミットを引き出すのはかなり難しいのかもしれません。
取り入れられることがあるとしたら、経営陣がリファラルが何より大事だと発信し続けたり、できるだけスムーズにリファラルができるように仕組みを整えることでしょうか。
倉林:そうですね。ボーナスがもらえるとかだけでは、リファラルに人は動かないですよね。本当に自分の会社が好きだったらリファラルは自然と生まれる。いかに社員に自分の会社を好きだと思ってもらえるかがすごく大事だなと思います。
そういう意味では、経営陣のコミットというのはやはり大事ですね。
とてもいいサービスを提供している投資先があるのですが、社歴も長く苦労した時期もあったせいか、なかなか採用ができずに困っていたんです。
そこで経営陣がとった行動が、Linkdinで1万人に連絡をするというもの。あまり知られていないですがこんなに面白い会社ですよとDMを送り続け、最終的に先日とある有名SaaS企業で活躍していた候補者の入社が決まりました。
本当に数ヶ月それだけをやり続けていたみたいで、その候補者に会った時に「まさにこんな方に自社にきて欲しいと思っていた!」と感動して泣いてしまったらしいんですね。それで、こんなに会社の事思って熱中してる人がいるなら話を聞いてみようとなったそうなんです。経営陣のコミットが、採用に繋がる好事例だなと思います。
庄田:素敵ですね。コミットメントとみんなの努力の掛け算で、採用成功が近づくのかもしれません。1万人にDMを送るのはいつでもできることではないので、認知を獲得するところはもっと仕組み化していきたいですね。
投資先の採用活動で失敗だったと感じる事例を一つ教えてください
庄田:最初のトークテーマは、採用がうまくいっている事例についてでした。次のトークテーマは、採用活動の失敗事例について伺いたいと思います。
倉林:月並みですが、条件が良いからという理由で入社した方が、壁にぶつかった時に離脱してしまうというのはよく目にします。入社理由が砕けた時に頑張れなくなってしまうんですよね。逆にビジョンやカルチャーへの共感があると、一緒に乗り越えていけるいい採用になると思います。
庄田:条件や役職等を重要視している転職者は結構多いですか?
倉林:そうですね。同世代の転職希望者の相談をよく受けるのですが、ほかのオファーのほうが条件がよかったとか、自分を評価してくれたとかで意思決定してしまう人は一定数います。一方で、いい会社であればあるほど初見の人にシニアなタイトルは渡さないですよね。
もちろんできることがあるのはいいことですが、僕ら世代になるとアンラーニングも必要です。それが難しそうな人から相談を受けたときは、残ることや、起業することを勧めることもありますね。
原:スタートアップや、そこにおける職種に関する知識の問題もあるかもしれませんね。慣れてくると、あまり関係ないなと気にならなくなったりするケースもあります。
また、バイアスがかかるという意味で言うと、採用する側も同様です。こんなすごい人から応募がきた!なんとしてでも採用したい!と思ってしまうことがありますよね。
一方で、採用は一回失敗すると、その人がまた自分と近い人を採用していくので、どんどん違うカルチャーが生まれて、社内政治が発生して、と恐ろしい負のループが起こってしまいます。コミットと言っても、なんとしてでも採用するという意味ではなく、きちんと見極めることが大切だなと思います。
庄田:ベンチャー界隈では時々、あんな経歴の人を採用できるなんてすごい!という話題が出たりしますが、会社名や経歴だけではその人のことは分からないという前提にいたほうがいいですね。
原:そう思います。そもそも能力のある若者たちが集まってるのがスタートアップですよね。華やかな経歴がなくてもすごい人はたくさんいるので、経歴ではなくカルチャーフィットを見た方がいいと思います。
スタートアップ界隈・大企業の転職・採用活動について5年前と変化したなと感じることは?
庄田:次にお聞きしたいことは、5年前と比べた採用の変化です。原さんいかがでしょうか。
原:スタートアップは、年々資金調達の額が大きくなってきているので、転職先として選びやすくなっていると感じています。
一方で、会社の数に比べると転職したいなと思う人はまだ足りていないので、採用はすごく大変ですよね。どこもとにかく人が足りない状態だと思います。
領域もフェーズもいろんな会社があるので、選びやすくなっていると思うのですが。
庄田:スタートアップに流入する人を更に増やすというのは大事な論点ですよね。身近な人がスタートアップにいる人も増えていると思いますが、まだまだ魅力が伝わりきってない気がします。
今はどうしても各会社が頑張って広報するしかなくて、経営者の有名度などが重要になってしまっていますが、いかに良い会社だよと社員全員でアピールしていけるかが、大事だなと今日改めて思いました。
倉林:それでも、長く見てきた我々のような人から見れば、どんどんスタートアップへの流入は加速しているなと思います。大企業に入ったら3年は我慢するんだ、というのが常識だった頃から考えると、一流企業で活躍してる人がスタートアップで挑戦したいとなっている今は、自由を手に入れたんだなと嬉しく思います。
庄田:いいタイミングでスタートップをやらせてもらっていると思います。
一方でアメリカと比べるとまだまだな側面もありますよね。どういう要素が日本にもあったほうがいいと思いますか?
倉林:こうなるといいなと思うことでいうと、辞めることに対して明るいですよね。企業側も、うちには合わなかったかもしれないけど次は活躍して欲しいなと思っていたりと、裏切られた!みたいな感じがない。もちろんお世話になったのに申し訳ないという思いはあると思うけど、その明るさはいいなと思います。
庄田:リクルートがそうだったんですよね。辞める人を「卒業」と称して盛大に送り出す。日本の多くの企業はまだ裏切りという感覚はありそうですよね。先に転職した人が成功事例として発信していくことが大事そうですね。
原:そうですね。やはり我々にとって転職はまだまだ重いことですし、逆にアメリカのスタートアップはどんどん人が辞めていたりする。IPO前のグロースだけやっていろんな会社を渡り歩いてる人がいたり。日本とアメリカでは職業への考え方が大きく違いますよね。どちらがいいというわけではない。いずれにせよ採用の文化を変えるというのは地道にやっていくしかないなと思っています。
HERPに追加出資した背景を教えてください
庄田:ではいよいよ最後の質問に移ります。HERPに追加出資いただいた背景を改めて教えていただけますでしょうか。
原:採用の悩みは一切ないという会社は1社もないと思いますが、採用は会社作りにおいてとにかく大事なので、それを解決する会社が出てこなければならないと考えています。
まだどうしたらいいのか絶対解は見つかっていませんが、プロダクト開発のスピードが早かったり、ユーザー目線があること、そして何より採用のことを本当に考えてる人が集まってることが大事だと思っています。
HERPは採用に人生をかけている人がとても多い。この会社なら、採用という巨大な領域で解を見つけてくれるのではと思って追加出資をしました。
倉林:SaaSという目線でHERPをみると、着実に成長し続けているという前提もありますし、マーケットを読む機微・それをプロダクトに落とし込む力とスピードがある会社なので、これからも大きく成長すると考えました。
直近で言うと、コロナになっても逃げずにやるべきことをやりきった迫力も素晴らしかったです。それもあって、追加出資を決めました。
庄田:おふたりともありがとうございます。
今日のお話にあった通り、採用領域は成果が目に見えにくいからこそ、これが解であるというのが一つあるわけでないという中で、リスクをとってやっていくのがこの領域での醍醐味だと思っています。我々は多くの今後の日本を強くしていくであろう会社様を既にサポートさせていただいており、そんな企業様をさらに強くする挑戦をしていきたい。そういう機会をご一緒いただける方がいらっしゃったら、ぜひご連絡いただきたいなと思っています。
原:採用は、ミッションやカルチャーの基礎でもあり、個人の人生もかかっていて、日本の社会にとってもとっても大切なことです。人の人生にも企業にも社会にも直接関わる領域で働くことはすごく面白いと思います。
倉林:特に日本の採用は元々ユニークな中で、デジタルの時代に大きな転換点を迎えていますが、それをドライブしていくのがHERPだと思っています。シリーズAの投資ばかりしてきて、改めて会社は人で決まるし、採用が差別化に直結すると痛感します。これからもHERPが日本の採用のハブになったらいいなと思っているので、そんなHERPでトライしたい人がいたらぜひ応募してみてください。
庄田:ご参加いただいたみなさま、ご登壇いただいた倉林さん、原さん、本日はありがとうございました!
最後に宣伝となり恐縮ですが、海外HRTechサービスについて調査していてnoteで連載しておりますので、HR事業について関心のある方はぜひご覧いただきフォローいただけると幸いです。